https://www.komei.or.jp/news/detail/20160513_19998
月刊公明 2016年 6月号に投稿しました。
【以下要約】
金融は、身体で言えば循環器系であり、安定的に栄養を隅々まで届け、そして老廃物を排除するように、 今話題のフィンテックも、資金を必要な時に必要な形で必要な量、供給し、実体経済を支援するのが本来の役割 です。
インターネットは、きわめて民主的な道具であり、富裕層、低所得者を問わず、また、大企業であろうと 中小企業であろうと、先進国、新興諸国問わず公平に使えます。したがって、幅広く活用され、格差を 解消する道具として役立つことこそ、インターネット時代にふさわしい使い方です。
情報通信技術(ICT)は、距離と時間を克服する道具であり、これを活用する フィンテックも、大企業、富裕層、大都会、金融機関のためのも のではなく、あらゆる消費者、 生活者、中小企業、地方の広範な人たちの、利便性を大きく改善し、 福祉に寄与し、日本経済を活性化させる道具で なければいけません。
この新しい道具を、いまの日本の課題、そしてアベノミクスに即して言えば、中小企業の稼ぐ力強化、ふるさと創生、需要拡大、に役立つように実施することが、まさに日本的フィンテックそのものです。
とりわけ中小企業にフィンテックを普及させる、そのメリットを享受してもらうことは、喫緊のテーマで す。
そのためにクリアしなければならないいくつかの課題を提起させていただきます。
1.中小・小規模企業のクレジットカード決済の支援
小規模企業や中小企業が、フィンテックに移行するためクレジットカード決済は不可欠ですが、小規模で あるがゆえに審査に通らないことが多いのが現実です。その利点を受けられないのは不公平でさえあります。小 規模であってもクレジットカード決済を利用できるような支援を提供してほしい。
2.法人用ネット口座の無料化
個人のネット口座利用は無料ですが、法人は無料ではありません。毎月2000円程度費用がかかるた め、とりわけ、小規模企業での利用率は低く、銀行に行って支払っている中小企業がまだ多いのが現状です。こ れではフィンテックの入り口に立てません。
大企業と比べて取引量が少ない中小企業にも同じような費用を求めるのは公平ではありません。インター ネットバンキングを中小企業が活用できるための中小企業振興策として、幅広い企業にその効果を認識してもら うためにも、個人口座と同じく無料にしてほしい。
3.支払いの即日化
下請法では、最長60日以内に支払わなければならないと規定されています。これは、手作業の時代の、 会計締めの猶予期間を想定したものであって、現在は、とりわけ大企業では、経理のシステム化が進み、 フィンテックの導入と合わせ、締めなど待たなくても、リアルタイムに、日々の売上や原価、債権債務も確定でき、納品が確認されればすぐにでも支払うことが できます。
発注者という優位な立場を利用して取引先への支払いを遅らせ、しわ寄せさせているとさえ思えるケース があまりにも多いのが現状です。世界標準は 即日支払いです。早く支払えば、取引先の中小企業も社員に給与が支払え、その取引先にも早く支払えます。その結果、国 内の資金が円滑に回るのです。
資金の余裕があるからと言って、自社株買いをするくらいなら、まず、取引き先 への支払いを優先すべきです。ゼロ金利、そしてマイナス金利の時代には、締め日にまとめて支払うのではな く、支払いの平準化、買掛負債の早期支払いによる保有資金の平準化が財務管理としてふさわしいのです。
資金の余裕があるからと言って、自社株買いをするくらいなら、まず、取引き先 への支払いを優先すべきです。ゼロ金利、そしてマイナス金利の時代には、締め日にまとめて支払うのではな く、支払いの平準化、買掛負債の早期支払いによる保有資金の平準化が財務管理としてふさわしいのです。
大企業が率先して早く支払うことで、需要増大、景気浮揚への即効薬になります。これこそ大企業の社会 的責任でもあります。
電子受発注、そしてデータで請求書を受け取り、即支払うというフィンテック実施による最終的な成果と してが、中小企業への支払いが早期化することになれば、国民のフィンテックへの評価が高まることは間違いあ りま せん。
4.法人番号活用による金融データ連携
フィンテックは、企業同士の業務がつながることに大きな価値があります。現在、入金の際に口座番号は 伝えられないので、受取り企業は、電文のカタカナから支払元を類推し、手作業で請求消込を行うという、まさ に旧式の手作業実務が普通に行われています。日本の生産性が低い本当の原因がここにあります。
昨年末に、法人番号が公開されました。これを取引データに付記することで、特に中小企業へ請求消込の 業務省力化が促進され、人手不足にあえぐ経営への大きな支援につながります。業界に先駆けて静岡銀行はデー タ連携(API)を公開しましたが、このような金融APIを活用することで、中小企業に向けた利便性と安全 性の高いフィン テックサービスの提供が期待されます。実効あるフィンテック実施のために、法人番号活用と金融機関のデータ 連携が欠かせません。